多波長異常分散(MAD)法
まずはMAD法を用いた位相決定を行ってみます。MADによるデータ測定は重原子誘導体を用いたり、Se-Met変異体を用いたりします。今回の例ではSe-Met変異体を用いています。ここで用いるのはPDBに登録されている2DSYを解析した際のデータです。
MADに関する詳しい解説は・・・適当に調べて下さい 。
使用するファイルたち
回折イメージから用意しても大変なので(3GBほどになりますしね)、それを処理したファイルを使用します。
ここでの処理はHKL2000とSCALEPACKを使用しています。
- 2dsy-mad.tar.gz -- ファイルサイズ約4MB
ファイル構成は以下の通り
2dsy +--- scales/ | 01peak_P21_190ano.sca -- ピーク波長 | 01peak_P21_190ano_nomerge.sca -- Unmergedファイル | 02edge_P21_190ano.sca -- エッジ波長 | 02edge_P21_190ano_nomerge.sca -- Unmergedファイル | 03remo_P21_190ano.sca -- 低エネルギーリモート波長 | 03remo_P21_190ano_nomerge.sca -- Unmergedファイル +--- solve_merged -- マージ済みファイルの解析 | solve.com -- 実行スクリプト | sequence.txt -- シークエンスファイル +--- solve_unmerged -- Unmergedファイルの解析 solve.com sequence.txt
- Peak : 0.9791Å / Edge : 0.9794Å / Low remote : 0.9815Å
これらの測定データを解析して位相決定を行うことにします。Unmergedデータの効果を調べるためにSCALEPACKで処理する際にno merge original indexオプションを付けて処理したファイルも用意しておきました。(参考:SOLVE RESOLVEを使ってみよう)
使用するプログラム
ここではPHENIX 1.24.1bに収録されているSOLVE/RESOLVEを使用します。PHENIX 1.3または単体のSOLVE/RESOLVEでも大丈夫だと思いますが、インプットファイルを少し修正する必要があります。
位相決定&モデル構築
何をするか
SOLVE/RESOLVEについては解説ページを参考にして下さい。つまり、SOLVEで初期位相を決定してRESOLVEで位相改良を行いつつモデル構築を行います。MADというと結構難しそうですが(少なくとも私には謎の位相決定法というイメージがあります)、データがよければSOLVE/RESOLVEであっさりモデル構築ができてしまいます。
なお、今回の位相決定&モデル構築はSOLVE/RESOLVEをPentium Dual 1.8GHzのPCで行って30分未満でした。
インプットファイル
SOLVE RESOLVEを使ってみようのページを参考にするとわかりますが、SOLVE/RESOLVEはスクリプトファイルを実行させます。アーカイブにあらかじめ用意したスクリプトファイルが収録されていますので内容を確認しましょう。
- solve.com
- PHENIX 1.3を使用する場合は/usr/local/phenix-1.24.1bの部分を自分の環境に合わせて下さい。
通常のSOLVE/RESOLVEを使用する場合はphenix.solveをsolveに、phenix.resolveをresolveに、symfileの部分を/usr/local/lib/solve/p21.sym(環境に合わせる)に変更して下さい。#!/bin/csh # Title : 2DSY MAD # SOLVE phenix.solve <<EOD title - 2DSY MAD dataset symfile /usr/local/phenix-1.24.1b/ext_ref_files/solve/p21.sym # Symmetryファイル cell 38.996 62.739 67.619 90.0 109.659 90.0 # 格子定数 resolution 2.2 20 # 使用する分解能 logfile solve.logfile # ログファイル mad_atom se # 重原子名 refscattfactors # 原子散乱因子の精密化を行う readdenzo # DENZO(.sca)ファイルを読み込む unmerged # Unmergedファイル #premerged # マージ済みファイル lambda 1 # 1つ目の波長 rawmadfile ../scales/01peak_P21_190ano_nomerge.sca # 使用するscaファイル wavelength 0.9791 # 波長 fprimv_mad -7.6521 # f' fprprv_mad 3.8412 # f" lambda 2 # 2つ目の波長 rawmadfile ../scales/02edge_P21_190ano_nomerge.sca wavelength 0.9794 fprimv_mad -9.7934 fprprv_mad 3.8438 lambda 3 rawmadfile ../scales/03remo_P21_190ano_nomerge.sca # 3つ目の波長 wavelength 0.9815 fprimv_mad -5.7805 fprprv_mad 0.5011 nres 348 # 非対称単位中の残基数 nanomalous 12 # 非対称単位中の重原子の数 scale_mad # MADデータのスケール analyze_mad # MADデータの解析 solve EOD # RESOLVE phenix.resolve<<EOD | tee resolve.logfile solvent_content 0.357 # 溶媒含量 seq_file sequence.txt # アミノ酸配列ファイル EOD
- sequence.txt
>2DSY(87res) MDGMGTLTRYLEEAMARARYELIADEEPYYGEIPDLPGVWATGKSLKECEANLQAALEDWLLFLLSRGETPP PLGEVRIELPHGEAA
これらのファイルを準備して実行すれば解析が行われます。うーん、簡単。
SOLVE/RESOLVEの実行
それではいよいよ解析します。作業は2dsy/solve_mergedまたは2dsy/solve_unmergedディレクトリで行います。PHENIXまたはSOLVEのセットアップを行った後に実行します。
% cd 2dsy/solve_unmerged % ./solve.com
これだけです。得られたモデルはresolve.pdbに書き出されています。mergedとunmergedの結果を比べてみて下さい。
また、精密化後の最終構造はPDBから取得可能です。
次に何する?
無事に初期構造が決定されたら、次は電子密度図を見ながらモデル修正を行います。構造の中でもループ部分のようにゆらぎが大きい部分は自動で構築できないので精密化をしながらモデルを組んでいきます。
また、自動でモデル構築を行ってくれるCCP4のARP/wARPなどのプログラムを用いてRESOLVEで構築されなかった部分の自動構築を試してみるのも一つの手です(効果があるかどうかはわかりませんが・・・)。
応用
自分の構造を解析する場合に修正する場所はあまり多くありません。高度なオプションを使わなければsolve.comを修正して使用することができます。
- SOLVE
- RESOLVE
- solvent_content -- 溶媒含量
- seq_file -- アミノ酸配列ファイル