構造を決定する  

構造解析の基本である構造決定に関してまとめます。詳細な手順を網羅することはできませんので各手法についてざっと流れをまとめようと思います。
あくまで私の経験に基づいた手順ですので怪しいところもあるかもしれません。その他のご意見もよろしくお願いします。

分子置換  

分子置換で構造を決定したい  

スタンダードにはCCP4のMOLREPまたはPHASERを使います。その他、CCP4のAMORE、EPMRなどがあります。PHENIXやCNSでもできたような・・・CCP4MrBUMPってのもありますね。
そのぐらいポピュラーな構造決定法ですが、ここではMOLREPによる分子置換を例に挙げておきます。
大まかな手順は以下の通り

  1. HKL2000のSCAファイルをMTZ形式に変換する(MOSFLMを使っていれば不要)
  2. MATTHEWS_COEFで非対称分子数を見積もる
  3. MOLREPで解を探す
  4. 解が見つかればREFMACでRigid body refinementを行う
  5. 頑張ってモデリング&精密化
    • マップがそれなりに良好なら(2.3-2.5Åぐらい)COOTのPostMR Extentionを使ってみる
    • もっときれいならLAFIREを使ってみる

こんな感じになります。

具体的な手順  

  1. HKL2000のSCAファイルをMTZ形式に変換する
    ファイルフォーマットの変換のセクションを参考にしてSCAファイルをMTZ形式に変換します。この変換はCCP4を使う上では基本の作業なので覚えましょう。
    XDSの結果をMTZに変換する手順はまだフォローし切れてません・・・
  2. MATTHEWS_COEFで非対称分子数を見積もる| CCP4iの[Program list]->[Matthews_coef]を使って非対称分子数を見積もります。入力するのは大体以下の項目です。
    1. MTZFile -- 変換したMTZファイル
    2. Use molecular weight [estimated from number of residues] -- 私は残基数から計算してます。分子量がわかっているなら[entered in Daltons]でもいいと思います。
    3. Number of residues -- 残基数(Daltonなら分子量) で以下のような結果になります。
      Molecular weight estimated from number of residues: 750 
      Nmol/asym  Matthews Coeff  %solvent       P(3.47)     P(tot)
        1         9.75            87.39         0.00         0.00 
        2         4.87            74.78         0.01         0.01 
        3         3.25            62.17         0.19         0.14 
        4         2.44            49.56         0.65         0.64 
        5         1.95            36.96         0.14         0.21 
        6         1.62            24.35         0.00         0.00 
        7         1.39            11.74         0.00         0.00 
      この結果より非対称単位中の分子数を見積もります。大概のタンパク質結晶では溶媒含量(ここでの%solvent)が25%-70%ぐらいになるみたいなので(範囲外のものももちろん存在しますので注意!)、そのあたりの分子数と見積もります。この例では3,4分子あたりでしょうか。
  3. MOLREPで解を探す
    CCP4iの[Molecular Replacement]->[Molrep - auto MR]で分子置換を行います。ちょっとだけ解説を付けておきます。
    Input fixed modelすでにある解を使用するときに使います
    Use sequenceシーケンスファイルを使います。MOLREPが置換してくれます
    Search Parameters(NMON,NP,NPT,PST,STICK,LOCK,...)
    Search for ...非対称単位中の分子数を指定します。0は自動です
    こんなところで探索が行われます。
  4. REFMACでRigid body refinement
    解が求まれば、REFMACでRigid body refinementを行います。この後、マップとモデルを見て、どんな感じかを確認するとよいでしょう。分子が足りなさそうなら、得られた解をFixed modelとしてもう一度探索してみるといいかもしれません。
  5. 精密化
    後は精密化を行えば完了!

参考  

モデル分子の検索  

PDBからモデル分子を検索したい  

分子置換を行う際にはモデル分子が必要になります。モデル分子の検索はBLASTやFASTAを使いますが、PDBのサイトから検索することができます。

精密化  

精密化を行う  

CCP4標準ライブラリにない化合物を精密化したい  

問題
REFMACで精密化を行いたいが、ライブラリに登録されていない化合物のためエラーが出る
REFMACでのエラーは以下の通り。
Your coordinate file has a ligand which has either minimum or no description in the library
A new ligand description has been added to /home/nobrin/xtal/nn37/CCP4i/tes_39_lib.cif
Picture of the new ligand can be viewed using postscript file. See above
Check description in this file and, if satisfied, use it as the input library
Otherwise either edit bond orders manually or use CCP4i Sketcher to view and edit the ligand
and create a library entry by running libcheck
It is strongly recommended that dictionary  entry should be checked carefully before using it
If you are happy with the library description then use the keyword (MAKE CHECK NONE)
I.e. do not check correctness of the coordinates
===> Error: New ligand has been encountered. Stopping now
 Refmac_5.5.0109:  New ligand has been encountered. Stopping now
解法
エラーメッセージの中にあるように出力されたCIFファイルをLIB inに指定して再度流せば作成されたCIFを使って精密かが行われます。