SHELXL使いへの道  

用意するもの  

最初のコマンド  

$ shelxpro

Rigid body refinement  

とりあえず.insファイルを編集してSHELXLに突っ込む、というのが常套のようなのです。なので、先ほどSHELXPROに作ってもらった.insファイルを大切にね!

conjugate gradient minimization -> full matrix least squares minimization  

CGLS 10 -> L.S. 20 -1

座標の精密化しかしたくない  

BLOC 1

2.5Åまで使いたいです。や、むしろ、2.5Åまでしか使いたくないです。  

SHEL 10 0.1 -> SHEL 10 2.5

4Åから徐々に0.1Åずつ精密化に使用する反射を増やしていきたいです。  

STIR 4.0 0.1

タンパク質を剛体(堅いからだ)と定義するため、  

AFIX 6

さてさて、これで  

$shelxl foo

と打ち込んであげればリファインメントが始まりますが、大体の場合叱られているLOGが流れます。対処する、しないは別にして警告やコメントはしっかりと理解するようにしておきましょう。特に対称操作でぶつかる分子などの情報はしっかりと修正するようにメモっておきましょうね。SHELX君はこれらの結晶中でとなりあう分子間の相互作用に関するリストレイン情報を持ち合わせていないので、とても困ってしまうってこった。

どうすればよいの?  

何が起こっていたのか?ということを理解するために、.lstファイルを見るようにしましょう。

Following 1,2- or 1,3-distances involving residues not restrained

という行があるので、そこから先を見てみると

CB_1011 Fe1_1082   SG_1011 Fe1_1082   SG_1011 S1_1082   SG_1011 S3_1082  

てのが、ツラツラと並んでいます。人によって行数が多い、少ないってのはあると思いますが。これらはSHELX君が内部に原子間結合情報を持ち合わせておらず「リストレインしませんでした、フン」という意味を持っています。1,2- 1,3-distancesというのは恐らく、SHELXはある3つの原子が順に1-2-3と結合しているときに、1の原子に注目して2番目、あるいは3番目の原子に対する位置の結合情報を扱っているためだと思います。これによって結合長、結合角が規定できるわけですよね。

さしあたって  

結構な数は叱られるはず。よくよく見ると、ナガーイアミノ酸残基など(ARGとか)が引っかかる場合が多い(モデルがしょぼいから?)。こんなときはCbetaより先をちょん切って使うってなことをやってみましょう(初期段階はね)。どうやって削るのか?ってのは、PDBをこちょこちょいじるのでは「なくて」、.insファイルをいじるのだ。

叱られているアミノ酸について  

.insファイル(よく見ようね)中に残基情報が載っているところがあるので、そいつらをエディタ(viとかemacsとかね)で消してしまおうってこと。

まだ叱られますか?どうですか?  

no match

とかって言われる場合、モデルを切り取ったところとかで叱られるはずなので、個人で理解できていれば問題ないでしょう。

座標と等方性温度因子の精密化だよ〜ん  

まずは  

前の精密化のファイルをコピーするのだ。  

$cp foo.res foo2.ins

とな。SHELX君はこのように精密化によって変わった情報(上記のRIGIDなら座標は全体的に変わっているはずですよね?)を.resファイルに書き込んでくれています。座標が更新されるわけで、それは次からの精密化に使わなければならないわけで、ずっと使えるなんて、青春がずっと続くなんて思わないでよね。

次に  

.insファイルを編集していきましょう。

BLOC 1

を削除。覚えてます?座標の精密化しかしたくないときに、これを使います。今回は「等方性温度因子」も精密化したいので、このようにBLOC文を削っておきます。

L.S. 20 -1 ⇒ CGLS 20 -1

剛体君リファインメントでは無くなったので、フルマトリクス精密化は無謀です(あ、分解能によります)。で、conjugated gradient法による推定的精密化に切り替えます(REFMACCERには馴染み深いですよね?)。

SHEL 10 2.5 ⇒ SHEL 10 1.5

に変えましょう。RIGIDは分解能なんて低くていいんだよー、ってことですよね。これからはしっかりと等方性温度因子を精密化するぞ〜ってことで使用する反射の分解能をあげてあげるということです。

STIR 2.5 0.1

さっきも出てきましたが、2.5Åから0.1Åずつ分解能を伸ばして(反射数を増やしていって)精密化をするってことです。RIGIDでは2.5Åで分子全体の位置を決めました。で、今回の場合はモデルが正しいと思っているので(前に解けてた、あるいはREFMACである程度精密化をしていた、と言う前提)、2.5Åの位相が「かなりの精度で」決まっていることを期待して、そこから「真の構造」をはずさないように精密化をしていこう、っていう目論見です。

AFIX

コマンドを抜きましょう。AFIXは「ここからここまで剛体だぜ」という宣言です。今回の精密化には必要ありませんね。

SIMU 0.1... ⇒ SIMU 0.05...

リストレイン(原子間の既知情報を使った束縛条件)を緩める、ということを示しています。デフォルトは0.1なんですが、これを緩めておいてわざとSHELX君に「なぁ、ここの構造おかしいんやけど・・・」というLOGをかかせることで「おかしな構造」をいち早く見つけよう、ということでこの段階で「ほんの少し」束縛を緩めてあげています。

計算してみましょう  

計算が終わったら電子密度やlistファイル(.lst)を見てみてしっかりと悪い構造を修正していきましょう。

最初の構造修正(モデル修正)が終わったら・・・  

もう一度、SHELXLなのだ。賛成の反対なのだ。  

タンパク構造の常套ですね。この段階でモデル修正をして「う〜ん、これってマルチコンホメーションかなぁ」などと悩むよりも腫瘍な(主要な)部分の修正だけで結構だ!ってことで。

問題の箇所を見つけよう(.lstファイルを開けてみろよ)  

MAX(SIMU) deviation

.lstファイルの最後のほうに掲載されている、この値によってこの作業が楽になります。もしこいつが0.15を越える、つまり、隣り合う二つの原子の温度因子が

0.15*8*pi^2=12A^2

12も違う!って部分を探してみましょう。隣り合う原子の温度因子が12も違っていたら、その原子の周辺に何か問題ありそうですよね?なので、重点的に修正をしてみてください。

問題の箇所に対応しよう  

削ったり、再構築(最初のRIGIDで削ったのが見えてきたりしたら)したり、しましょう。

もしも、劇的に精密化情報が変わってしまったら(残基とか削って)  

$shelxpro

というコマンドを叩きましょう。つまり、最初に.insファイルを作成したあのアプリケーションを再び用いるわけです。この場合は、ちゃんとPDB座標を準備しておきましょうね。

.insファイルは適宜書き直してね  

CGLS 10 -1

にして、Free-Rフラッグを有効に(Free-R因子を出力できるように)しましょう。

SHEL 10 0.1 ⇒ SHEL 10 1.5

まぁ、SHELXPROを使って書き直すかどうかは、人それぞれだとは思いますが、混乱しないためにもこの作業は重要のように思います。

コマンド覚書(ごめんね、全てをフォローするのはザックリ覚えてからにする)  

SIMU 0.1.... -> SIMU 0.05....

にすると、リストレイン(つまり原子結合情報の理想を仮定してそれを真の値として束縛をかけること)を緩めることが出来る。SIMUが何を指すのか現時点では知らないが、リストレインを緩めることで「モデルの悪い部分」を見つけやすくすることが出来るらしい。by Thomas Schneider(人のせい)