SHELX C/D/E
Prof. Sheldlickが開発した強力な位相決定ツール。
ここではHKL2MAPを利用せず(HKL2MAPを使ってみよう)硬派にスクリプトを利用する場合を述べます。
やっていることは同じ・・・はず・・・です。
SHELX C/D/Eを用いた初期位相の決定
このページではSHELXを用いて最初の電子密度をゲットする方法に関して述べます。
SHELX C/D/E それぞれの役割
- SHELXC これから重原子位置を発見するための準備をいたします。
入力ファイル:HKL2000(DENZO/SCALEPACK), SHELX形式, SCALAを使った人はoutput unmerged polishオプションで反射ファイルを作ってください。 - SHELXD 実際に重原子位置を発見してくれる
- SHELXE 発見した重原子位置から初期位相を計算し、電子密度が描ける状態に持っていってくれる
MAD用のインプットファイルの例
shelxc jia << eof "eofがあるまで入力行でそこまでをshelxcに食わせるよ、という意味。" NAT jia_nat.hkl "Nativeデータ(ある場合)" HREM jia_hrem.hkl "High remoteデータ(ある場合)" PEAK jia_peak.sca "Peak データ(絶対いる)" INFL jia_infl.sca "Inflection(Edge) データ(ある場合)" LREM jia_lrem.sca "Low remoteデータ(ある場合)" CELL 96.00 120.00 166.13 90 90 90 "結晶格子定数” SPAG C2221 ”空間群” FIND 8 ”サイトを8個見つけてくれ!とSHELXDにいうための行” NTRY 10 ”10回SHELXDサイクルをまわすぜ;HKL2MAPデフォルトは100回" EOF "入力はここで終了" shelxd jia_fa "上で作ったインプットファイルを元に重原子サーチ" shelxe jia jia_fa -s0.6 -m20 "Solvent flatteringを用いた簡単なDensity Modification" shelxe jia jia_fa -s0.6 -m20 -i "上記とは手系の逆の位相計算をする(内容は同じ)"
SAD用のインプットファイルの例
shelxc thau << EOF SAD thau-nat.hkl CELL 58.036 58.036 151.29 90 90 90 SPAG P41212 FIND 9 DSUL 8 MIND -3.5 NTRY 100 EOF shelxd thau_fa shelxe thau thau_fa -h -s0.5 -m20 shelxe thau thau_fa -h -s0.5 -m20 -i
SHELXCで使用するコマンド
SHELXCはSHELXDを利用するための反射ファイルやインプットスクリプトなどの準備を行います。
引数
shelxc FOO
FOOの部分はこのプロジェクト共通で利用するプレフィックス。重原子発見用の反射ファイルや重原子の位置情報などのアウトプットファイルはこのプレフィクスで出力される。
CELL
格子定数
SPAG
空間群
FIND
探し出す重原子の数を指定。
SHELXDで使用するコマンド
SHELXDはSHELXCに続けて走らせる必要がある。SHELXCに必要ないコマンドを入れておくと、それをSHELXD用スクリプトに足してくれる。
DSUL
DSUL 8
ジスルフィド結合を8個探せ(結合距離2.06Aとして)。
PEAK自体は各S原子について拾ってはくるが、距離が近い重原子についてそれらをジスルフィド結合(super-sulfer)として認識させる場合に使用。
MIND -3.5
PATSやFINDコマンドで見つかってきた重原子サイトが近い場合、どの程度の距離までを「別のピーク」として認識させるか。それを決定する。値は「負」で入れておくとPATFOMの計算を行い、.lstファイルに最良解を出力してくれる。
NTRY
重原子発見するための計算を何回繰り返すか?を指定。100くらいでよいでしょう。
その他、使いそうなコマンドの簡単な説明(SHELXD)
コマンドライン | 説明 | 例 |
---|---|---|
SHEL VALUE1 VALUE2 | 分解能指定 | SHEL 999 2.0 |
PATS VALUE1 | Patterson関数によるピークサーチ | FINDとあわせて使用 |
ESEL | 使用する最小のE(規格化構造因子)を指定する | ESEL 1.2 |
.phsファイルを.mtzファイルへ変換する
SHELXEを行うと位相情報が計算され、それらは構造因子Fと共に .phsファイルに書き込まれます。
ただしSHELX系では電子密度の改良が(マニュアルにも載っていますが)貧弱だそうで、さらには構造精密化にSHELXLを使用しない場合、MTZファイルへ一度変換しておく方が楽でしょう。
この場合、.phsファイルはテキスト形式で書き出されておりますのでこいつをCCP4-f2mtzを用いてMTZファイルへ変換する必要があります。
一応、HKL2MAPのHPからphs2mtzというスクリプトをダウンロードできるが簡単にしたものをアップしておきます。
スクリプトの利用
ご注意いただきたいことは、uniqueifyの部分です。勝手にFree-Rフラッグを立てます(5%)。
嫌な人は最後のuniqueifyを削除しましょう。
phs2mtz.com
choose_shelxe_chiral
ヘッダ部分の編集
set PREFIX='ttt' # .phsファイルの「.」より前の部分 set CELL='37.17 37.17 142.18 90.00 90.00 120.00' #格子定数 set SYMM='P6522' # 空間群
以上を適宜編集後、スクリプトを実行。
連携例
.phs->MTZファイルへの変換をした場合の連携例ですが、ARP/wARPに突っ込むもよし、RESOLVEに突っ込むもよし。
RESOLVEは
(F, sig(F), phase, FOM)=(F, SIGF, PHI, FOM)がMTZファイルに含まれておればその仕事を遂行してくれます。
上記、phs2mtz.comを利用した場合、RESOLVEへの連携は以下のように行います。
resolve << eof > resolve.log hklin foo.mtz labin F=FP SIGF=SIGFP PHIB=PHIB FOM=FOM .... ....
などとしてresolveを走らせちゃいましょう。これでうまく行けばモデルをゲットできます。
なんちゃってスクリプト by くにを
このプログラムがやってくれること
- SHELX C/D/Eを使った重原子位置発見と位相計算とDM
- Inverse/Original いずれかDMの結果から良い方を選択(choose_shelxe_chiral)
- SHELXEのDM結果グラフを.psファイルへ出力。
- .phsファイルのCCP4 MTZへの変換およびFree-Rフラッグ立て
- ARPwARPによる自動モデル構築(Free-Rフラッグ無・・・)
必要プログラム
必要な情報
- SCALEPACK merged anomalous .sca (unmerged未対応)-スクリプト実行ディレクトリにおいておくだけ
- シーケンスファイル(.pir) - パスから指定のこと
- 位相決定分解能
- 溶媒含量
- 残基数
- 重原子種と非対称単位中の重原子数
編集するところ
################################################################### set SYMM='P43212' # 空間群 set SCA_FILENAME=`ls *sca | sed -e 's/@//g'` set PROJECT='iom' # プロジェクトの名前;適当 set PHASE_MIN_RESOL=25 # 低角分解能 for SHELXD set PHASE_MAX_RESOL=1.8 # 広角分解能 for SHELXD set NUM_OF_TRY=100 # SHELXD重原子サーチ回数 set NUM_OF_FIND=3 # 重原子個数 set ANOM_ATOM=Br # 重原子種 set SOLVENT=0.42 # 溶媒含量 set NUM_OF_DM=100 # SHELXE DMサイクル数 set NRESIDUES=129 # 残基数 set SEQ_FILE='/isilon/MOVE/BLBench/3.Lysozyme/lys.pir' # PIRファイルのありか # End of parameters to be modified ###################################################################