初めての構造解析
2011-09-02 by どぶお
まとめちゅう
学生の時、キミのテーマはこのタンパク質の構造を決定して、その触媒機構を解明することだ!、そんなことを言われて困りました。
私は勉強が嫌いな学生でしたから、予備知識は全然なし。まず、タンパク質の構造って何よ、から始まって報告会での何だか分からない言葉のやりとり。結晶構造解析の教科書はこれだ!と言われても数式ばかりで何のことやらさっぱり(今でもそれは変わりませんが)・・・
そんな時に欲しかったページがこの章です。タンパク質の結晶から、最終的にどんな結果が得られるのか。それを見てみましょう。
「タンパク質の構造」とは何か
全体構造をつかむ
こんなのです。
ひょっとしたら見たことがあるかもしれません。これは高校の授業で習った「αヘリックス」やら「βストランド」やらの二次構造を模式的に表現した図です。この図によってタンパク質の全体的な構造を視覚的につかむことができます。αヘリックスがこんな風に集まってるのねー、とか大まかな特徴が分かります。
他にもいくつかの表現方法があり、状況に応じて表現が使い分けられています。
実際は何?
ここで表されているのはあくまで図、です。全体の構造を俯瞰するにはいいのですが、触媒機構を解明といった本質的な議論はできません。それを議論するためには「原子レベル」で構造を見ていかなければなりません。原子レベルの構造、つまり原子の「位置(座標)」を使用します。構造は立体的なので、X,Y,Zの三次元の座標で構成している原子の位置(相対位置)が規定されます。上の全体構造の図はこの原子座標を基にしてPyMOLというプログラムで描いたものです。
実際の座標は以下のようになっています。
ATOM 13 N GLY A 5 15.082 11.104 45.063 1.00 36.86 N ATOM 14 CA GLY A 5 15.290 9.666 44.999 1.00 31.87 C ATOM 15 C GLY A 5 14.635 9.128 43.754 1.00 28.98 C ATOM 16 O GLY A 5 14.028 9.883 43.017 1.00 27.07 O ATOM 17 N THR A 6 14.716 7.821 43.536 1.00 26.31 N ATOM 18 CA THR A 6 14.235 7.265 42.284 1.00 26.01 C ATOM 19 C THR A 6 12.722 7.499 42.100 1.00 24.39 C ATOM 20 O THR A 6 12.270 7.801 40.992 1.00 23.33 O ATOM 21 CB THR A 6 14.617 5.762 42.121 1.00 26.44 C ATOM 22 OG1 THR A 6 16.050 5.668 42.021 1.00 31.03 O ATOM 23 CG2 THR A 6 14.033 5.187 40.840 1.00 25.32 C ATOM 24 N LEU A 7 11.963 7.380 43.189 1.00 23.04 N ATOM 25 CA LEU A 7 10.513 7.508 43.089 1.00 22.00 C ATOM 26 C LEU A 7 10.122 8.953 42.895 1.00 20.78 C
これはPDB形式で一般にはPDBファイルとか単に座標とか呼ばれたりします。
PDBとは
PDB形式、のPDBとはProtein Data Bankの略で、タンパク質の構造が登録されているデータベースです。世界で統一されたアーカイブが3つの拠点で運営されており、日本は大阪大学の蛋白質研究所を拠点としてPDBjが運営されています。
もっと詳しく見る
原子の相対位置が分かっているので、必要であれば、原子レベルの図を描くこともできます。構造解析の結果の報告では、これらの図を使いながら触媒機構であったり、認識機構であったりを記述していきます。
実際はどんなの?
構造に関して説明しましたが、実際の構造解析ではどんなものを見るか、というと電子密度を見ます。なぜ電子密度が見えるかというのはX線結晶構造解析の教科書を参照して貰うとして、その電子密度を元に構造を決定します。決定された電子密度および原子座標は例えばCOOTなどのプログラムで見ることができます。
構造を見てみよう
言葉ではなかなか説明しにくいので実際に構造を眺めてみましょう。
ここでは構造解析ができる環境が必要ですが、COOTというプログラムを使って見てみましょう。
以下のファイルをダウンロードして適当な場所に保存して下さい。
- 2dsy.pdb
- 2dsy.mtz
保存したらプログラムCOOTを起動します。構造解析ができる環境(Linux)であれば以下のようにコマンドラインに入力します。
% coot